リルケ『若き詩人への手紙・若き女性への手紙』 高安国世 訳 (新潮文庫 1953)
どのような仕事を自分の人生で選んでいけばいいのか。とくに自分が「これが好きでしたいと思っていること」を続けるべきかどうか迷っている方に、ぜひ読んで頂きたいのが、この作品。19世紀末から20世紀初頭に活躍した、詩人リルケの『若き詩人への手紙・若き女性への手紙』です。今回はそのなかでも「若き詩人への手紙」を取り上げます。
この作品はリルケが、自分のもとに届いた詩人を目指す若者からの手紙への返事です。リルケは若い詩人に対して、ある意味での厳しさを示しつつ、同時にとても優しく丁寧な返事を書いています。そのなかでも有名な、詩を書くことについての部分を今回は取り上げたいと思います。
リルケは他人の評価を気にしてはいけないといいます。それどころか、助言を気にしてはいけないといいます。そのかわりにこういいます。
「自らの内へおはいりなさい。あなたが書かずにいられない根拠を深くさぐって下さい。それがあなたの心の最も深い所に根を張っているかどうかをしらべてごらんなさい。もしもあなたが書くことを止められたら、死ななければならないかどうか、自分自身に告白してください」p.15
死ななければならないかどうか、というのは、なかなか強い表現です。それぐらいの強い思いが自分のなかにあるかどうかを確かめてほしいという話です。
そして、自分自身に書かなければならないかを問い、そしてそれが確かめられたなら、
「そのときはあなたの生涯をこの必然に従って打ちたてて下さい」p.15
と言います。
つまり、自分のなかに「書かなければならない」という心があるのであれば、それをしっかりと打ち立てて、生涯をかけて取り組むという話です。
もちろん、詩を書くことと、日々の仕事を選ぶことは、同じではないかもしれません。けれども、「自分の内側にある、どうしてもしたいという想い」に耳を澄ますという姿勢そのものは、どんな仕事を選ぶときにも共通しているように思います。
自分だけの仕事とは?
私も仕事として、さまざまな方の人生の転機に接することがあります。そのなかでも、「自分の仕事をどうするか」というテーマについて悩んでおられる方も少なくありません。休職や転職、新しく仕事を始める方など、いろいろな方がおられます。
そういった方々の話をうかがいながら思うのは、このリルケの助言と似ているということです。自分の内側を丁寧に見つめていって、「本当にこころの底からそれをしたいと思っているか」
そして「その仕事をしないと、一生後悔するか」などです。
というのも、なんとなくの憧れで「この仕事をしてみたい」と思われる方もおられます。もちろん、それも大切ですし、場合によっては試しにその仕事をしてみるのも、良いかと思います。そういった試行錯誤をしながら「自分だけの仕事」を見つけるのもひとつですが、いつまでも探し続けることになるかもしれません。
「なかなか自分に合った仕事が見つからない」「本当に自分がしたいことか分からない」。そのように悩んでいる方は、ぜひ自分の内側におりていっていただきたい。
まわりの人はいろいろいうかもしれません。そんな仕事をしても上手くいかない。どうやって生活をするのだ。夢物語をいつまで追いかけているのだ。自分が本当にやりたいことをすると、そういった批判が出てきます。それも不思議なことに、なぜか身近な人ほど、そういった意見を言います。
もちろん、それにはある部分では、正しさと、こちらへの心配も含まれているので、無下にもできません。そういったときほど、もう一度考えてください。「それをしないと、私の人生はどうなるか」
つまり自分の人生を作るのは結局は自分自身。自分が決めていくのです。もちろん、リルケのように「詩人」という仕事だけで暮らすのは現代では難しいかもしれない。それならば、生活のために別の仕事をしていたとしても、「詩を書くという、自分の心の底からしたい仕事」は同時並行しながら続けても良いのです。だれかに言われたからといって、諦める必要はない。
リルケが手紙のなかで若い詩人にそうしたように、答えは誰かに与えられるものではなく、自分自身のなかから見つけ出すものです。ただ、その内側を一人で見つめ続けるのは、決して簡単なことではありません。
もし、自分の内なる声が分からない、仕事も見つけられないという方がおられたら、カウンセリングにお越し頂いても結構です。こころの底にある、本当に何がしたいかを見つけるためのお手伝いをさせて頂きます。


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