「カウンセリングの申し込み方」カウンセリングを受けようか迷っている人に向けて。第3回 

インタビュー

(前回の続き)

カウンセリングはいつ受けれればいい?

――始めに聞かせていただいた内容にもつながるのですが、カウンセリングはどのようなときに利用すればよいかわからなくて。来られるのはうつや発達障害の方という話でしたが、やはりメンタルの問題を抱えている人が行く場所というイメージでいいのでしょうか。

Mi:それは私たちがいつも悩んでいることです。日本ではカウンセリングをどのようなときに利用するかが、一般にはまだ知られていません。
たとえばアメリカのドラマや映画を見ると、かなり身近にカウンセリングがあるのがわかります。少しメンタルの不調や悩みがあったら「カウンセリングを受けてみる」という選択肢が出てきます。日本でいうと、体に不調が出たときに「ちょっとマッサージを受けてみよう」という感覚に違いのではないでしょうか。もちろんマッサージという選択肢がある人もいるし、医者に行く人や、自分でストレッチをする人などもいますが、そういった普通に思い浮かぶ選択肢の一つにカウンセリングがあるようです。もちろん文化的背景や、保険制度の違いもあるのですが、まだまだ日本ではカウンセリングを受けることへの敷居は高いと思います。

――それは、もっと身近な悩み事でも相談しても良いということですか?

Mi:そうですね、何を身近とするのかは難しいのですが、いわゆるメンタルの病いにかかっていない人でも受けて頂いて結構です。
実際には精神科の病院に行くほどでもないけれども、自分では解決できない悩み事があるので、カウンセリングを受ける人もいます。友人関係や家族関係についての悩みが多いですが、ほかにも「人生をどのように生きていけばいいのか分からない」のような漠然としているけれど、深い悩みを抱えている方も相談に来られます。もちろん、ちょっとしたこころの悩みでも結構です。

――どんな悩みでも構わないということでしょうか?

Mi:こころに関する悩みなら、という限定はありますが、大抵の相談はまず話を伺います。もちろん、こころに関する内容以外の悩みだったら「その悩みは別の専門家に依頼した方が良いかもしれない」という提案をすることもあります。精神科のお医者さんの受診を勧めることもあります。そういうときは、私も信頼できる精神科のお医者さんを紹介します。
クライエントからすると、どのような内容で相談したらよいのか分からないと思うので、私としては「とりあえず一度、ご相談ください」とお伝えします。来ていただいたら、その次にどうしたらよいのか状況判断できますので。こころの悩みか分からないけど、とりあえず来談したら、こころの悩みが背景にあるのが判明したというのは、比較的よくあります。そのときは、こころの悩みはカウンセリングの対応をして、それ以外の悩みは別の方法を提案することになります。
ただし実際に来談されるほとんどの方は、こころの悩みを抱えていて、いろいろ試したけれども改善が見られず、最終的な解決法を探してカウンセリングにたどり着いたというパターンです。私としては最終の手段ではなく、もっと始めに選択肢の一つとして考えて頂きたいと思っているのですが、なかなか難しいようです。

カウンセリングを申し込む方法

――ではカウンセリングを申し込むにはどうすればいいのですか?

Mi:カウンセリングは基本的に予約制です。当日いきなり来て「今から相談したいです」といっても難しいです。というのも、どこのカウンセリングオフィスも、ひとりのクライエントに充てる時間を決めています。ひと枠50分のところが多いですね。そのため急に申し込まれても、面接できないと思います。とくにある程度、人気のあるカウンセリングオフィスであれば、枠がいっぱいになっているので「この曜日のこの時間しか空いていない」ということがあります。ですので予約して頂く必要があります。

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――自分で探して予約をするということですね。でもこの自分で探すというのが難しいのですが。良いカウンセラーに受けたいと思っていても、どのように探したらよいのかわからないということがあります。

Mi:それは良く伺う質問です。いろいろなポイントはあるのですが、いくつかまとめると、まずは場所です。カウンセリングは1回で終わることはほとんどないので、自分が通いやすい場所であることが大切です。
もう一つは、カウンセラーの経歴、プロフィールですね。どのような領域でカウンセリングをしてきたかは大切です。私であれば精神科領域、とくに精神科病院で働いたことのある人を選ぶと思います。そういった経歴のある人は難しいケースにも対応できる可能性が高いのでお勧めです。持っている資格を考えると、現状では臨床心理士が安全かと思います。
あとはどんな技法を使うかですが、認知行動療法や催眠療法、精神分析、夢分析、箱庭療法など、特定の受けたい技法があるのであれば、それを選ぶと良いかもしれません。ただし注意したいのは「認知行動療法が絶対に効果が高いから、認知行動療法しかない!」など、技法を第一条件に挙げる人もおられるのですが、どの療法であってもクライエントとカウンセラーとの相性があるので、一概に効果が高いとはいえないと思います。カウンセラーとの相性が良ければ効果が出るし、悪いとそもそもカウンセリングが続かない。私としては選ぶ基準として技法は、それほど優先順位は高くありません。ここはカウンセラーとクライエントの見解の違いが出ると思います。
条件としてカウンセラーとの相性はとても大切です。私の個人的意見ですが、実際に会ってみて「この人とは続けて会いたくないな」「この人には相談したくないな」と思ったときは、別のカウンセラーを探して良いと思います。分からないときは数回通ってみて、判断したらよいと思います。会ったときの印象として「話しやすい」というのは大切ですね。相性が悪いと、どれほど経歴や技術が優れていても、こころはあまり良くならないと思います。相性がいいと、話を聴いてもらっているうちに、いつの間にか良くなったということも起こったりします。もちろんカウンセラーとしてはただ話を聴いているだけでなく、専門的な対応をしているのですが。

――それほど相性って大切なのですね。では予約するときには、どのような手続きが必要なのですか?

Mi:カウンセリングオフィスによりますが、申込時には大まかな相談内容と希望日時の確認をすると思います。そのあとにすぐに予約日時を提案するオフィスもあれば後日、予定日を調整したあとに連絡が来ることもあると思います。
電話やメール、あとはLINE、ホームぺージ上のカレンダーから申し込むなどもありますね。私のおすすめの予約方法は電話ですが、電話をかけることで、オフィスやカウンセラーの雰囲気がわかると思います。ただし、個人でカウンセリングオフィスをしていると、電話に出られない場合があります。カウンセラーの立場としてはネット上で申込があっても、できれば電話で確認したいという思いはあります。声や話し方の調子から、その方の精神状態がわかる場合がありますので。

カウンセリング初回に準備するもの

――では予約が取れたとしたら何か持っていくものとか、準備するものはありますか?

Mi:手ぶらで来ていただいて、とりあえずカウンセラーに任せるという方法でも私は結構だと思います。しかし初めてカウンセリングを受けられる方は緊張しているので、自分が話したいと思っていたことが時間内に話せなかったということも起こります。事前にある程度悩み事をまとめておくのもよいかもしれません。
初回でカウンセラーが尋ねるのは、いつからその悩みが始まったか、その背景に何があったのか、これまでに病院やカウンセリングを受けたことがあるかなどなので、それをまとめておくのも良いと思います。
あとは現在病院に通っている方は、医師の許可が必要な場合があります。とくに公認心理師を持つカウンセラーであれば主治医の指示が必要になるので、主治医に事前に「カウンセリングを受けます」と伝えておく必要があります。ほとんどの医師は断らないと思いますが。どのような精神科のお薬を飲んでいるかを確認するカウンセラーもいると思います。

――Mi先生であれば、どのようにお伝えするのですか?

Mi:私は手ぶらでかまいませんといいます。ご自身が必要であれば、書いてきてもいいですよとお伝えします。

――それは何か理由があるのでしょうか?

Mi:これは私のスタイルかもしれませんが、私は精神科病院で臨床をしていました。カウンセリングや心理検査だけではなくて、担当病棟があって病棟内でグループセラピーなどをしていました。自然と病棟の患者さんと仲良くなってきますので、むこうから話しかけられることも増えます。そうなると、たとえば「今度、お母さんが面会に来るけどどうしたらいいかな」など突然に悩み事を相談されたりします。そのとき「ここで話すのはプライバシーもあるので、部屋で話しましょうか」という対応もあるのですが、私が会っていた患者さんだと「それならいいです」と話をやめてしまいます。そういう対応だとその後、話してくれなくなる。そのため、パッといわれたらパッとその場である程度答えを出して伝える。解決できないときは「それは今はどうしたら良いかわからない」と素直に伝える。そういうことが必要でした。
こういった経験があるので、相手が準備をしていない状態であっても、その場で思いつきで話された悩み事をしっかりと聴き、すぐに悩み事の本質はどこかを把握し、すぐに返事するのが当然になってきます。理論的に見ても、準備して書いてきた悩み事は、自分が話せるように形を整えている内容ですので、没個性的というか、本音が隠されることになりやすい。なので話を聞きながら、本音としての悩みの部分がどこかを探さないといけないという側面もあります。
ただしこれは私の方法であって、カウンセラー一般の意見ではないと思うので、あくまで参考に留めておいてください。

――興味深い話ですね。現場の実践で鍛えてきましたという印象のエピソードで面白いです。カウンセラーの方もいろいろなタイプがいるのだと分かる内容で、とても参考になります。
今回はカウンセリングを始めるときの話を伺いましたが、次回はカウンセリングが始まったらどうなるのかについても伺いたいと思います。引き続きよろしくお願いします。

Mi:よろしくお願いします。

(次回に続く)

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