最近は比較的よく持ち込まれる相談です。ただしカウンセリングオフィスよりも、精神科の現場でよく出会う質問かもしれません。
「発達障害かどうか」の診断名をつけるのは医師です。確定診断が必要であれば当該の部下の方に、病院を受診していただかなければなりません。
受診するときに覚えておいていただきたいのは、診断名が付いたところで「問題が解決するわけではない」ということです。診断名が付くことで「どのようにしていくかの方針ができる」。対応について相談をするなかで課題の解決を目指します。
では発達障害に関する相談を受けたカウンセラーはどのように対応するのかを説明します。
まずは発達障害が疑わる人の状態や職場の状況を確認します。相談に来られた方が「部下は発達障害だ」と仰っていても、どのような状態なのか、具体的に職場でどのような言動で困っているのかを確認しなければ、対応を検討できません。
というのも一般的に発達障害といわれる状態(「空気が読めない」「自分勝手な行動」「こだわりの強さ」)であっても、ほかの心理的な要因によってその状態が表れている場合があるためです。状態の背景にある要因によっては対応が異なるので、まずは確認が必要です。
また職場としてどのように対応してきたのか、そしてどのように今後対応していきたいのかを確認します。
「そのような人は邪魔になるので、辞めてほしい」と正直な気持ちとして思ってる会社の方もおられるかもしれません。やむなく対応するしかないと思っている会社の方もおられるかもしれません。
または会社としてその人が必要なので、どうにか対応して会社に貢献してほしいと考える場合もあるでしょう。
どちらの場合であっても、カウンセラーの立場からみて「その人への対応としてできそうなこと」を提案します。発達障害であれば、その特性に合った仕事内容や対応方法、声のかけ方などを説明します。そしてどのようなことを発達障害の方は失敗しやすいか、その背景に何が起こっているのかを説明します。
そして、カウンセラーの意見をお伝えさせていただいた後、一度、会社でその対応を試していただきます。そして結果としてどうだったかを聞かせていただきます。
カウンセラーから対応方法を聞いたとしても、実際に対応するのは会社の方です。やってみて上手くいかなかったこと、上手くいったことが当然出てきます。それら確認しこちらも対応を修正していきます。
困りごとを訴えてこられた上司の方のなかには、アドバイスを1回受けたらそれで問題が解決すると思っている方もおられます。
しかしどのような人でもそうですが、1回のアドバイスで考え方や行動が変わることはまずありません。
人は時間をかけて少しずつ成長するなかでしか変わりません。カウンセラーと相談を続けて、少しずつ状況が変わるようにしてくことが理想です。
会社の対応力の向上を目指す
そのようなときに目指すのが、上司など会社の対応力を上げることです。
相手を変えるためには、対応する側(上司や会社)の対応力を上げることが先になります。対応力を上げた結果として、相手が変わることにつながります。直接に相手を変えようとしても、失敗することが多いです。
発達障害の方はもともと自分のパターンを守ろうとするので、変化を起こすのは難しいです。そうなると上司が、焦りや怒りが募り、対応に失敗するということを繰り返しやすいです。相手を変えるよりも、まずは上司の対応力を上げる。これがまず目標になります。
対応力が上がるとメリットもあります。発達障害の方に対応ができるようになると、こころに関わる課題を抱えている人への対応力が上がります。こころの問題と関わるコツがつかめてくるからです。
部下への対応でカウンセリングに相談に来られる上司の方は、基本的には現状をどうにか変えたいというモチベーションが高い方が多いです。
自分たちの対応次第で、社員が変わるのではないかという志のある上司の方たちと、一緒に仕事ができるとしたらカウンセラーとしても嬉しいです。
Mitoce 新大阪カウンセリング・心理検査
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コメント
[…] 発達障害を抱えている人を取り巻く周りの人がどの程度困っているかというのは、また別の課題です。それについては「Q19. 部下が発達障害かもしれないのですが、どうしたらいいですか?」を参考にしてください。 […]