Q.81 人とコミュニケーションをとるのが苦手なのですが、どうしたら良いですか?

よくある質問・カウンセリングの疑問

コミュニケーションが苦手

他人とのコミュニケーションが上手くとれないという悩みを抱えている方がおられます。

事情を伺うと、自分の思いを言葉で表すのが苦手、人前で話すと緊張してしまう、たくさん人がいるとどうしたらいいのか分からなくなるなど、いろいろな状況でコミュニケーションについて悩んでおられるようです。

どのようなことに悩んでいるかは個人によって異なるのですが、内容を整理してみると、次のような2つの課題がみえてきます。

1.思っていることを言葉にする
2.他人の思いを読み取って話す

この2つの課題に集約されると私は考えます。

まずは思っていることを言葉にする

自分の思いを言葉に出すことは、慣れない人にとってはかなり難しいと感じるかもしれません。言葉にするためには、いくつかのハードルがあるからです。

ハードルのひとつ目は、自分の思いを察知する能力。

自分がどのような感情を抱いており、どのような考えになっているのか、こういったことを言葉にするのが苦手な場合があります。
そのような方に「今、どんな思いですか?」と聞くと、「わかりません」と答えることがあります。「自分の気持ちなのに分からないの?」と思うかもしれませんが、そのような方は「自分の気持ちもよくわからない状態」なのです。

対応として周囲の人が本人に代わって、感情を察知して言葉にしてみることが役立ちます。
しんどそうな表情をしていたら「今、しんどくない?」「なにか負担になっていることがありそうだけれども」とこちらから、感情を言葉にして伝えます。
それを手掛かりにして「ああ、今、しんどいかもしれない」と気づけるようになります。

思いを言葉にするためには「自分の思いに合った言葉を使う」練習が必要です。
練習をするためには、自分のこころの中にある「もやもや」について振り返りながら、「怒っている」「心配」「さみしい」など感情に関する言葉を探す必要があります。もやもやしているとき、感情に関する言葉を口にして、それがぴったりくるのかどうかを確かめます。それが、ぴったりとくれば「ああ、これが怒りなのだな」と体験的に理解できるようになります。

このような体験を積み重ねることで、少しずつ自分が思っていることを言葉にできるようになります。

他人の思いを読み取って話す

自分が思っていることを言葉にするのはできるけれども、相手にどのように伝えていいのかわからない、という方もおられます。
相手に伝えるためには「相手の気持ちを読み取る力」「相手の気持ちや考えに合わせて伝える力」が必要になります。

コミュニケーションが苦手だと思っている方は、相手の気持ちが読み取れないというよりも、「気持ちを読み取りすぎる」ケースが多いかもしれません。

「こう思われたらどうしよう」「私の言葉で気分を害さないか」など、相手の思いを気にしすぎて話せなくなるようです。そして、気にするために「相手と話さないようにする」という行動をとってしまうため、コミュニケーション能力が上達しないのです。

コミュニケーションが苦手な人と上手な人を比較すると、上達方法がみえてきます。苦手な人は「相手を読めないから話さない」のですが、上手な人は「話しながら相手の反応を見て、言葉を変える」のです。つまり、相手の反応に合わせて話すのです。

話すのが苦手な人は、話し始める前に「適切な言葉を準備しておかないといけない」と思うのですが、話し上手な人ほど「ある程度は用意するけど、話しながら考える」という方法を取ります。そのため、相手の気持ちが全部わからなくても話し始めるのです。

相手の気持ちを読み取る練習

では相手の気持ちを読み取るためにはどうすればよいのでしょうか。
それは先ほど説明した、まずは自分の気持ちを察知する能力を高める必要があります。

他人の気持ちを理解するためには、まずは自分の気持ちをある程度正確にとらえられるようになる必要があります。自分の気持ちを説明できるようになった人は、相手の気持ちを言葉で説明できるようになります。

もちろん精度の良し悪しはあるので、あるときはぴったりとくる説明ができるときも、まったく的外れなときもあります。しかし大切なのは、相手の気持ちを常に正確にとらえることではなく、正確にとらえられなかったとしても、どれほどリカバリーできるかです。

話していた相手が「それはちょっと違うな」と言ったときや、表情を曇らせたりしたとき「これは違っていたな」と思って、別の言い方に変える。すると、相手が納得したような表情をする。このような微調整を繰り返します。

コミュニケーションが苦手な人は、相手が少しでも表情を曇らせたら「大失敗をしてしまった。やっぱりコミュニケーションが苦手だ」と思ってしまいます。そこで諦めてしまうようです。
しかし、コミュニケーションが上手な人は「ほかの言い方なら何ができるだろう」と改善するきっかけにすぎません。そのためコミュニケーションが上手な人は、さらにコミュニケーション能力を上達させていくのです。

コミュニケーションが苦手な人が、失敗しつつも少しずつ言葉を改善していく体験をするためには、「安心して自分のことを話せる相手」を見つけることが大切です。

カウンセリングで話す練習をする

コミュニケーション能力の改善を目的とした「アサーショントレーニング」(相手を尊重しながら自己主張ができるようになることを目指す訓練)もありますが、カウンセリングでもコミュニケーションについて扱う場合があります。

カウンセリングでは苦手意識をどのように改善していくかと話し合うだけではありません。カウンセラーに自分の話を聴いてもらうことで「相手に自分の話を理解してもらった」というコミュニケーションにおける成功体験を得ることができます。
そのようなこともありカウンセリングでコミュニケーションが苦手と感じている方に対応する場合もあります。

深層心理学のカウンセリングを行ってきた観点として興味深いのは、話すことに苦手意識を持っていた人が、こころが変わるといつのまにか、まわりの誰よりもよく話す人になるという変化が起こったりします。

苦手意識を持っているのはあくまでその時点での気持ちです。自分にとってマイナスにしか思えないことが、実は大きなプラスになることの前触れだったという機会もあります。
マイナスは自分を変えるチャンスかもしれません。新しい一歩を踏み出したら、コミュニケーションスキルが成長する可能性もあります。

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