休職中にどのように生活を送っていくか。とくに仕事をしていない、という状況でどのように生活費を維持するかは、かなり大変な問題です。
まずは、どのような支援があるのかを振り返ってみましょう。
申請して受け取れるお金
休職中は、健康保険から傷病手当金が支給される場合があります。これは会社独自の制度ではなく、協会けんぽや組合健保による法定の給付で、おおよそ標準報酬日額の3分の2程度が支給されます。とはいえ、それでまかなえるのは最低限度の生活費です。それまで贅沢をせず、低い給料のなかで生活してきた人にとっては、かなり厳しい水準でしょう。
しかもすぐに支給されるわけではなく、医師の診断書と申請手続きが必要になります。
「調子が悪いので休みたい」と思っても、まずは有給で乗り切り、そのあと休職に入るという流れになることが多いです。その際には、会社の人事などに休職の相談をしておくと安心です。
会社によっては、見舞い一時金などの独自制度が用意されていることもあるので、あわせて確認してみてください。
また、通院のための資金も必要になります。高額療養費制度を利用すれば、自己負担を抑えることも可能です。
ただし、厳しい現実もあります。
どのような会社に勤めているかによって、状況は大きく変わります。
いわゆる大手企業では、福利厚生が充実しているケースが目立ちます。
正社員と派遣社員とでは処遇が異なることも少なくなく、大手の正社員には「守ってくれる制度」がある分、強みがあるといえるでしょう。
一方で、派遣社員として働き、福祉的なサポートが十分でなく、貯金もなく、休んだ先には退職しか選択肢がない――そうした状況に置かれている方もおられます。
そのような場合、退職して退職手当を受け取る、あるいは公的な福祉サービスを利用するといった方法が考えられます。その際には、市役所の福祉担当部署に相談してみましょう。
これまでのコラムでは休むことを基本的に推奨してきましたが、「生活が立ち行かなくなるため、働きながら回復を目指す」という選択肢もあります。ただしその場合は、通院とカウンセリングを並行して行うことを前提に考えるのが望ましいでしょう。
生活の安定と入院
一人暮らしか、家族と暮らしているか。
これによっても状況は大きく異なります。
精神的にしんどいときには、手続きだけでなく、生活全般がつらく感じられるものです。ちょっとした家事や判断すら、負担になることがあります。
そのため、サポートしてくれる人がそばにいるかどうかは重要な要素です。
一人暮らしをしている方であれば、一旦実家に戻るという方法もありますし、帰れる実家がない場合には、回復するまで入院するという選択肢もあります。
精神科への入院をためらう方は少なくありません。しかし、しんどくて何もできない状態のまま一人で過ごし、気持ちを追い詰めてしまうくらいであれば、入院するほうが望ましいと私は考えています。
精神科病院で私も働いていましたので、入院病棟がどのような場所かはよく知っています。正直なところ、病院によってはほかの患者さんの様子をみて、びっくりされる方もおられるかもしれません。そういったときは、「部屋から出ずに、部屋でひとりで居る」という方法もあります。
しんどいときには「何ができないか」をみつけるだけでなく、「今、取ることができる選択肢を準備しておく」ことが大切です。入院もその選択肢の一つとして考えてみてください。
精神的なゆとりと経済力
経済的な安定は、精神的なゆとりを生む。
これは紛れもない事実だと思います。
経済的なゆとりがなければ、なかなか落ち着くことはできません。だからこそ、使える制度や、サポートしてくれる人の手を、可能な限り利用してほしいのです。それは回復のためにも欠かせないことです。
精神的に余裕がないときには、「自分のことで誰かに迷惑をかけてしまう」「支援を受けることが申し訳ない」という気持ちが湧いてくることがあります。しかし、そうした支援制度は「しんどくなった人のために」用意されているものです。自分がしんどい状況にあるのなら、迷わず利用すべき制度だといえるでしょう。
そして、回復したときには、その制度の存在をぜひ誰かに伝えてください。世の中にセーフティーネットがあることを知るだけで、気持ちが少し軽くなる人もいるはずです。
私自身、さまざまな方のサポートをするなかで感じるのは、一度会社を休んでから社会に復帰した方の情報が、あまりに少ないという現実です。
ほんの少しでも情報を知っておくことは、将来の不安を軽減することに役立ちます。
人生が詰むことは案外少ない
メンタルの不調で会社を休んだ、あるいは退職した。そのあと、いろいろな支援を受けながら、なんとか生き抜いてきた――そうした経験をお持ちの方は、決して少なくありません。
しかし、そうした方々が自分の過去を語る機会は少なく、知識として広まりにくいのが実情です。メンタル不調で会社に行けなくなったら、経済的にも、キャリア的にも人生が終わってしまう。そのように感じている方もいらっしゃるかもしれません。
けれども、適切な支援やリハビリを続けていくことで、社会に復帰すること、そして人生を立て直していくことは十分に可能です。
ですから、「あきらめる」という結論を急ぐ必要はありません。
無理をせず、できることだけをして過ごしていく。そうしているうちに、回復への道は少しずつ開けていきます。


コメント