精神科のクリニックや病院に通院中の方から、このような質問を受けることがあります。
主治医からは「うつ状態ですね」といわれて、「うつ病と違うの?」と戸惑うことがあるそうです。また似たような状態の人と話したとき「憂鬱」「うつっぽい」「私はうつ病です」などといわれて、その違いが分からなかったという体験をされる方もおられます。
自分の状態を説明するときに「憂鬱なのか、うつなのか、どう説明したらよいのかわからない」とおっしゃる方もおられます。
そこで今回は「憂鬱」「抑うつ」「うつ状態(抑うつ状態)」「うつ病」の違いについて、説明します。
1.憂鬱と抑うつとうつ病は違う?
まず憂鬱というのは、「気分がすぐれない」ことを表現する一般的な言葉です。「仕事のことを考えると憂鬱だ」「朝は憂鬱な気分だった」などです。気分のことを指すので、「しばらくしたら気分が晴れた」など、変化しやすい特徴があります。
抑うつというのは、気分の落ち込みがあり、活動性が下がっていることを一般に示す言葉です。本来は専門家が使う用語だったのが、一般でも使うようになった言葉ではないかと私は思います。そのため専門家が考える「抑うつ」と、一般の人が使う「抑うつ」ではニュアンスが違う場合があるので、注意した方がよいかもしれません。
うつ状態というのは、抑うつ状態ともいいますが、精神医学で使われることが多く、何らかの要因で抑うつの状態が出てきており、それがある程度持続していることを指します。「精神状態の一種」を指す言葉です。参考として、抑うつ状態はあとで説明する「うつ病」以外の病気であっても、出てくることがあります。強いストレスを感じたあとや、認知症の症状、身体の病気などでも出てくることがあります。
うつ病となると「病気」ですので、診断基準に当てはまったとき「うつ病」と診断する専門用語です。「うつ状態」「不眠」が持続しているなどが診断基準に含まれます。診断は医師が下すものなので、「私はうつ病です」というためには、正確には「私は医師にうつ病と診断されたので、うつ病です」ということになります。
2.気分の状態を説明するときに気を付けること
気分の状態について主治医や支援者に話をするとき、私としては出来る限り「抑うつ」などの専門用語を使わない方が良いと思います。
「抑うつ」などの用語は、一般の人と専門家では指している内容や意味のずれが大きいからです。こちらが思っている状態が相手に伝わらない可能性があります。
そのため私は「抑うつ」を使う代わりに、具体的に状況を伝える方が伝わります。
- 朝起きると、身体が怠くて起き上がれない。
- 頭は働くのだけれども、体が重い。
- 早く仕事に戻らなくてはとあせってしまう。
- 夜寝ようと思って布団に入っても、朝方まで寝付けない。
もしクライエントが「私はうつ状態です」とおっしゃったとき、私は必ず「具体的にはどのような状態か」を確認するようにしています。
お互いに認識のずれが少ないほど、支援や治療が上手くいくので、このあたりは注意して頂きたいです。
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