相手と話をしたけれども、思うようにこちらの意図が通じないとき、最近は「発達障害があるのでは」と疑うことが多いようです。
カウンセラーとして確認しておきたいことは意図が通じないだけでは発達障害かは判断ができないことです。とくに気持ちが通じていないと思うとき、相手に「話がわかってもらえない」のか、「話が通じない」のかによって大きく異なってきます。この違いを確認しておくことで対応が変わってきます。
話が分かってもらえないとは
話が分かってもらえないと思うときの状況を考えたいと思います。
「分かってもらえない」と思うとき、その人は「相手は自分の気持ちを分かってくれるはずだ」という期待があります。
自分は伝えたい想いがあるのに、その想いを理解してもらえない。相手への期待とあせりのような気持ちが「分かってもらえない」には含まれています。
そうなると次に導き出される対応は「どうしたら分かってもらえるか」になります。
話し合いの機会を持つことや、相手に聞いてもらえる言い方を工夫したり、話を聞いてもらえそうなタイミングを図ったり、相手の気持ちを汲んでみたり。相手と話の理解を共有できるようになることを目指します。理解が共有できれば「分かってもらえた」と感じられます。
とくに「共有」が大切です。一方的に意見を伝えても共有は難しいのです。相手がこちらの話を理解してくれそうな態度を引き出すことが大切です。相手に「分かってもらえない」と感じたら、「どうすれば相手が自分の話を聴いてくれるのか」を考えてもらうとよいかもしれません。
話が通じないときの期待
「話が通じない」と「分かってもらえない」ときの状況には大きな差があります。
先ほど「分かってもらえない」には相手への期待が含まれていましたが「話が通じない」ときには、含まれていません。それどころか「期待を諦めてしまっている」ともいえます。
「通じない」と思うのは、コミュニケーションが上手く成立しないときに「通じない」ときです。つまりコミュニケーションの成立するかどうかに問題が起きてしまっている。
たとえば日本語で話しかけても、相手が英語しか理解できないとき「日本語が通じない」という思いが出てきます。「通じない」のは、相手と話の意味を共有するための前提が成立していないからだといえます。
そのため「同じ言語を話している」にもかかわらず話が「通じない」とき、「通じない何らかの理由がある」と考えます。そのときに相手に「発達障害があるのでは」と疑うのです。
発達障害を抱えている人と話していると、そのような「通じなさ」を感じることがあります。しかしそれ以外の状況でも「通じない」事態が起きることがあります。
例えば、相手の方がコミュニケーションをとる体制にないときです。それは話すこと以外に注意を向けているときだったり、話の文脈とは全く違うことを考えている状態のときだったりします。そのようなときは、こちらがどれだけ話しても通じません。
これは発達障害の人たちへの対応につながる手掛かりとなります。
発達障害を抱える人たちであっても工夫次第で話が「通じる」ようになります。
発達障害を抱える人たちの「通じなさ」は、「こちらが話しかけているけれども、別のことを考えている」ときや、「こちらの伝えた言葉を、別の文脈で理解している」ときに起きてきます。このようなズレを修正することが対応につながります。
こちらが話しかけているとき、「相手の関心が今どこにむいているか」を確かめることが必要です。そしてこちらの話に向いていなければ「今から話をします」と、話へと注意を修正することが必要です。
または「文脈のずれ」を修正するために、ずれが生じにくい言葉や表現を駆使する必要があります。それは単純な言い回し、短い言葉で伝えるなどの工夫となります。
いわゆる一般の人とのコミュニケーションでは「通じない」ことが起きにくいので、「話が通じない相手」が現れると、多くの人は混乱します。混乱したときに、なんとか自分の気持ちを落ち着かせようと、混乱の原因探しをします。そこで思いつくのが手にしやすい「発達障害」という用語だったりします。
ただしその用語を手にしたところで「通じない事態」は解決しません。解決するためには「通じなさがなぜ起こっているのか」を解き明かして、それに応じて言葉を工夫しなければならないのです。
とくに「発達障害」という言葉を使うことで、気休めの安定をしているだけで、問題の解決まで至らず、コミュニケーションが成立しないというフラストレーションを抱き続けている人も多いので注意が必要だと思います。
Mitoce 新大阪カウンセリング・心理検査
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