【書評】孤独はひきよせ合う。谷川俊太郎『二十億光年の孤独』

書評

谷川俊太郎 『二十億光年の孤独』1952(集英社文庫2008)

 

日本を代表する詩人の谷川俊太郎。詩だけでなく、翻訳でも数々の著名な作品を手がけました。身近な例としてレオレオニ『スイミー』、スヌーピーで有名なシュルツのマンガ『ピーナッツ』シリーズも、彼が翻訳しています。その彼のデビュー作品がこの『二十億光年の孤独』。18歳の谷川少年がノートに書き綴っていた詩を父親が見つけてその完成度の高さに驚き、知人の三好達治に見せたところデビューが決まった、という作品です。

集英社文庫版のこの詩集は巻末に、当時の谷川少年が手書きで書いた詩のノートが掲載されており、また英訳も載っています。谷川少年の息遣いが伝わってくるような筆跡を実際に見ることができ、この版はお勧めです。

さて、詩集の由来となった「二十億光年の孤独」という題名の詩。改めて読み直すと、鋭い言葉に、思わず考えさせられます。全文は本書を参考して頂くことにして、次の言葉について触れたいと思います。

 

万有引力とは

ひき合う孤独の力である

彼が書いたこの詩集は、「孤独」がひとつのテーマとなっています。 たとえば、近所に住んでいた犬の「ネロ」が亡くなったことを綴った詩「ネロ」など、谷川少年が繊細な感性で拾い上げた孤独を表現した作品がいくつかあります。

カウンセラーという立場で考えると、気づかされるのは「ひき合う孤独の力」です。 カウンセリングに相談に来られるクライエントの多くはこの「孤独」を抱えています。 そうなると、クライエントのこころをひき合えるようになる、つまり交流するためには、カウンセラーも「孤独」を抱えていなければならないのではないだろうか。 カウンセラーが孤独であるからこそ、クライエントの孤独にも関われる。 そのように考えたりします。

 

宇宙はひずんでいる

それ故みんなはもとめ合う

谷川はつづけて、宇宙はひずんでるから、もとめ合うといいます。 お互いに何を求めるのでしょうか。孤独を抜け出すことや、何かの想いをかなえたいであるとか。 もし、ひずみのない世界であれば、わざわざ何かを求める必要はなかったかもしれない。 例えば相手との関係に何らかのひずみがあるから、相手に求めるのかもしれない。

ひずみと求めることは、セットである。

そのように考えると、何かを求める自分はひずみを抱えていることが良く分かってきます。

 

宇宙はどんどん膨らんでいく

それ故みんなは不安である

しかもひずんでいる宇宙は膨らんでいく。 つまりいつまでたっても、ひずみが無くなることはない。それゆえにもとめ続けなければならない。 そういった先の見えない、何かを求め続けて満たされない世界。それゆえに、みんなは不安なのです。

 

こういった世界観を、戦争を経験し、戦後日本が大きく復興していく流れのなかで、谷川少年は不安と孤独を感じ取っていたのでした。

 

現代ではどうでしょうか。 世界とのつながりは拡大していったのですが、拡大には限界があるということを、少しずつ気づき始めています。しかしながら、ひずみに溢れていることにも気づくようになってきました。 つまりひずみは拡大し、不安もある。そのなかで、孤独をかかえ、人間的なつながりを求める。

 

二十億光年の孤独に

僕は思わずくしゃみをした

くしゃみをして、吹き飛ばせればと思います。

 

プロフィール
この記事を書いた人
三輪 幸二朗

Mitoce 新大阪カウンセリング代表
臨床心理士

Mitoce 新大阪カウンセリング
電話番号:06-6829-6856
メールアドレス:office@mitoce.net

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