自信がないといって動けない人
カウンセリングに来られた方が「自分は自信がありません」と仰る場合があります。
話を伺うと「私はしたいことがあるのだけれども、自信がなくてできない」と説明されます。
こういった悩み事に対して「だれでも挑戦するのは大変。でもとりあえずやってみると何とかなる」と正論をいう方もおられます。
しかし、こういったアドバイスを受けても「わかっているけれども、できない」と、結局行動につながらない場合が多いです。
では、なぜ自信がないのでしょうか。
自身がない理由をうかがっていると「自信がない」という言葉の裏に「未知のことに挑戦するのが怖い」という「恐怖心」が透けて見えることがあります。
つまり「失敗するのが怖い」「だれかに批判されたらどうしよう」「上手くいかなかったとき、どうしたら良いか分からない」という怖れです。
このような怖れは「マイナスの予想」につながります。自分に対処できなくなるような状況が起こるかも、という予想です。これはいいかえると、恐怖心は自分が思い浮かべた「マイナスの予想」から出てきており、自分自身の予想について「恐れている」といえます。
マイナスの予想をプラスに変える?
自身がないとき、自分のなかにいつの間にか湧き上がってくるのがマイナスの予想です。マイナスの予想をプラスに変えることはできるのでしょうか。
私は「失敗するのが怖い」という人に「成功の喜びを思い浮かべるように」と促しても、考え方を変えるのは難しいと思います。
たとえば自分が思い浮べていない「真逆の考え」を想像できるでしょうか。真逆の考え方があるとわかっていても、自分に馴染めない考え方を想像するのは難しいでしょう。
これと同じではないでしょうか。「マイナスの予想」が身についている人は「マイナスの予想」が自分の腑に落ちる人といえます。それをプラスの予想に変換するのは、なかなか簡単ではないでしょう。
ではマイナスの予想が身についてる方は、どうすれば良いのでしょうか。
私は「その人のネガティブな思いのなかにも真実が含まれる」と考えており、これを手掛かりにしてアプローチします。
ネガティブのなかにある本音
カウンセリングでは、クライエントが「失敗するのが怖い」と仰られたとき、「失敗と仰いますが、どのようなことを思い浮かべているのですか」と聴くことがあります。
たとえば「試験に落ちたら、みじめな気持ちがするし、家族からもダメな人間だなと思われるかもしれない」「私も試験に落ちたら、自分はダメ人間だと思う」と答えて下さるかもしれません。
それを聴くといくつかの仮説が浮かびます。
「他人の評価を気にしやすい?」「試験は自分のためか、それとも他人からの評価のために受けるのかどっち?」「他人の評価が、自己評価に影響をかなり与える?」などです。
そこで私は浮かんだ疑問をクライエントに尋ねます。
クライエントはそれを聞いて「たしかに私は他人にどうみられるかを気にしています。それが私の自信のなさにつながっているかもしれません」と答えることがあります。
これはクライエントにとって、新しい気づきだと言えます。つまり「ネガティブな思いをポジティブに変えましょう」といっても出にくい返答だと思います。
質問によって「私は他人の評価を気にしていた。だから自信がないのかもしれない」とクライエントが自分自身で気づいたので答えたのです。
このやりとりのあとに、もう一度私が「始めにしたいと思っているけど、できないと仰っていましたが」と再び尋ねたとします。
クライエントが「確かに、したいと言っていたけれど、それは「認めてもらいたい」ということだったと思う」と違う考えをいいます。
そして「今気づいたけれども、私がしたいことは本当は別のことかもしれない。それならできるかもしれない」
もちろん、実際のカウンセリングではこれほど簡単に「違う考え方に気づけるようになる」わけではありません。何度も繰り返し話すなかで、徐々に自分の性格や違う考え方に気づくようになります。
つまり「自信がないからどうすればいいか」という話を進めるよりも「自信がないといっている言葉の裏にある本音」を明らかにしていく方が、こころの変化につながることがあるのです。
素直な思いが自信につながる
自信がなくて動けない、という人のなかには「本当は別のことをしたい(本当はしたくない)」という思いが隠れていることがあります。
そういった「素直な自分の思い」に気づいて、素直な自分で行動できるようになると「自信がない」という悩みが、いつの間にか治まっていることがあります。
自信がつくようになるにはどうしたら良いのか。その答えの一つが「自分の素直な気持ちを知ること」といえるかもしれません。
カウンセリングではネガティブな思いのなかにある、素直な自分に気づけるようになる手伝いをします。
自信が無くて身動きが取れなくなっている方は、一度自分の素直な気持ちを振り返ると良いかもしれません。
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