何故か仕事に対する気持ちが変わってしまった
以前は意欲的に仕事に取り組んでいたものの、今はその意欲が感じられなくなった。もしかすると自分はうつ状態に陥っているのではないかと相談に来る方がおられます。
とくに一定の期間、仕事を頑張ってきた人がこのような悩みを抱えている場合があります。
ではこの悩みについて、どう考えればよいのでしょうか。
カウンセリングにこのような方が来られた場合、まずは現在の状況を詳しく伺います。まずは身体的な病気がないか確認したあと、仕事の状況もたずねます。仕事の負担はどうか、こころや身体に無理をさせていないだろうか。そういった現状を確認します。
そこで疲労の要因が見つかれば、ストレスを避けて休養を取るように促します。休養が取れないのであれば、どのようにすれば負担を減らせるかを検討していきます。
ほかにも友人や家族との関係などで普段の生活のなかでストレスがかかっているようであれば、その対応についても話し合います。
ただし、これはストレスの要因が明らかになった場合の対応です。
ストレスはある程度は本人も分かっているので、これだけでは相談に来ないでしょう。本人にとって何故だかわからない要因があるから、相談に来るのです。
ストレスの要因が見つからず、何となくしんどいという方もおられます。
そこでさらに話を聴いていると「悩みを相談できる相手がいない」「何となく人生に飽きてしまった」という話が出てくることがあります。
10年以上仕事を頑張ってきたのに、なぜか急に仕事へのやる気が出なくなった。だからこそ深く悩むのです。
一人で生きることの影響
仕事や人間関係には問題がないものの、漠然とした悩み。仕事に意欲的に取り組んでいたのに、ある日突然、やる気が出なくなったといいます。
それは人生経験を積み重ねていくなかで、見通しが立ってきたのが原因かもしれません。どういうことか少し説明します。
人生経験が増えると、仕事や人間関係への見通しが立つようになります。「この先、こうなるだろう」と予測できるようになり、それ以上努力しても結果が見えていると感じて、意欲が低下するのです。
仕事の将来についても、大した変化がないように見えてしまい、やる気を失うのです。
そのうえ、これまでの人生を振り返りながら、同時に将来への漠然とした不安も出てきます。仕事の引退、親の介護、老後の生活など、自分の人生に対する限界や疑問、無力感などが大きくなり、最終的には仕事や生活全体への興味を削ぐことに繋がるのです。
残りの人生が見えてくる無力感は乗り越えられる?
人生に対する意欲が失われ始めたことが、仕事の意欲低下に影響しているときはどうすればよいのでしょうか。
そのようなときカウンセリングでは「これまでの人生で生きられなかったもう一人の自分」をテーマとして話し合うことがあります。
たとえば、これまでに真面目に仕事をするために生きていた人が意欲を失ったとき、「仕事のためにできなかったこと」を話します。それは仕事のほかに、自分が楽しめる時間を増やすなどです。趣味や旅行なども王道ですが、選択肢のひとつです。
それまで仕事に集中し一人ですごすのが楽だったけれども、急に将来が見えてきて不安になったという理由で、パートナーを探そうと決心する人もいます。一方で、もっと自分のための時間を作りたいと考えて、長くつきあったパートナーとの別れを決心する人もいます。
つまり「これまでに生きられなかった自分の別の可能性を探して生き直す」ことが回復の契機になります。 振り返るなかで別の生き方に気づいたとき、意欲が回復しはじめるのです。
生きる意味が見つからないまま、日々の暮らしを送るのは苦しいです。
一度立ち止まって、自分の素直な想いを振り返ってみる。すると普段の生活では見えなくなっていた本来の自分らしさに気づくかもしれません。そして自分らしい生き方を再発見し、そのあとに仕事や他者とのつながりを再構築することにつながるでしょう。そして意欲が回復していくのです
漠然とした悩み事は一人では解決しにくい
カウンセリングを利用するときに、明確な悩み事がないと相談してはいけないと考えている方がおられます。しかし、ここで説明したように、自分でもなぜかよく分からないけれども漠然と悩んでいる、という理由で来談される方も少なくありません。
まずは自分が何に悩んでいるかを明らかにしたい。そういった漠然とした悩みでも結構です。一度カウンセリングを検討してみてください。
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