「カウンセリング料金は何故高い?」カウンセリングを受けようか迷っている人に向けて。第4回 

インタビュー

(前回の続き)

ホームページでカウンセラーを選べる?

――前回にお話いただいた、カウンセラーを選ぶときの基準を参考にしてカウンセリングオフィスを調べていたら驚きました。
精神科病院の勤務経験がある臨床心理士で、カウンセリングオフィスを開業されている方を探すと、それまで数十件の中から探さないといけなかったのが、数件まで絞られました。これなら探せそうですね。あとはホームページを見て、判断すれば良いでしょうか。

Mi:大変申し訳ないのですが、私はホームページの雰囲気だけではカウンセラーの良し悪しの判断はできないと思っています。今回インタビューをしていただいているので、かなり正直な内容まで話させていただくと、ある程度お金を払えば雰囲気の良いホームページを作成することは可能です。プロが作るので見栄えも良く、またカウンセラーの写真写りもきれいなものを使えます。しかし、それではカウンセラーの力量は測れません。もちろん、どのような雰囲気のホームページを選ぶかは、カウンセラーの意向が働きますが、それは良いカウンセラーを担保するものではありません。
ある程度絞れたら、連絡をしてみると良いかもしれません。申し込みの対応で、カウンセラーの雰囲気が分かると思うので、それで判断するのがお勧めです。

――ホームページだけを判断材料するのは難しいことがわかりました。しかし直接、取材をして反応を確かめるのハードルが高いのではないでしょうか。

Mi:そうですね…。たしかに私としても悩みます。結局、来談されるクライエントに来談の経緯を伺うと、通うのに便利か、知り合いの紹介か、最近ではGoogleのコメントを参照にすることが多いようです。
私はある程度絞れたら、自分の納得できる程度までカウンセラーについて調べたあと、とにかく一度はコンタクトをとるのが大切と思います。会ってしまえば、初めてカウンセリングを受けるときのハードルが下がるので。失敗しても次へのハードルが少し下がります。

カウンセリングの料金は何故高いのか?

――ハードルについて考えると、あと料金はいかがでしょうか。以前から気になっていたのですが、どうしてカウンセリングはこれほど料金が高いのでしょうか。これもカウンセリングを受けにくくするハードルになっていると思いまして。

Mi:料金はとても難しい問題です。私のオフィスがある大阪でも、カウンセリング料金の平均は7000円から8000円程度。東京ではもう少し高く、1万円前後になるのではないでしょうか。なぜこれほど高いかというと、カウンセリングという仕事の特殊性があると思います。
人件費と場所代や研修費などのほかに経費を考えるときに必要なのは、カウンセリングは50分の予約枠を使って完全予約制ということがあります。クライエントが来なくても、場合によってはその枠を保持しないといけないという、カウンセリングの技法上の制約があります。
またカウンセリングが続くかどうかは常に不安定なので、キャンセルになったらその時点で収入はゼロ。自営業としては当然ですが、収入の保証がない。経営上の安定を考えると、どうしても料金は高くなります。
あとはカウンセリングを日本に広げた先生方が、海外で訓練を受けていたときの経済感覚も影響しているかもしれません。海外で資格を取ると、場合によれば費用が数千万かかり、研修で受けるカウンセリング(教育分析)も日本円に換算すると1回10000円前後だそうです。それが基本になったのかもしれません。
あとはカウンセラーの実力という側面から見ると、7000円の料金を取るカウンセラーと10000円の料金を取るカウンセラーでは実際に実力差はあると思います。そこは料金は正直かなと思います。料金が安ければ良いともいえないですし。ある程度実力ないと、高めの値段設定はつけられません。
ただしクライエントにすれば、カウンセリングに10000円払って、しかもそれが毎週となると負担が大きいです。私の場合もそうですが、基本料金は高いとしても、収入に応じた減額制度を取り入れているカウンセラーもいます。クライエントの事情を考えての対応です。

カウンセリングの頻度はどのくらいが効果的?

――確認したいのですが、カウンセリングはどの程度の頻度で受けるのですか?

 Mi:私は調子が悪くなって間もない人には毎週来てくださいとお伝えします。毎週同じ曜日、同じ時間が理想です。それで相性をまず確認するのがひと月、状態の変化を目指すならまずは3か月と説明します。

――そうなると場合によってはかなりの出費になりますね。仕事を休職してカウンセリングとなると経済的に大変ですね。

Mi:はい、そう思います。そのため私も減額制度を取り入れていますが、カウンセラーよっては、まったく値引きをしないと仰る方もおられます。
理由は、たとえばカウンセリングの料金はクライエントが自分のこころの課題に取り組むための覚悟を示すものでもあると。しっかりと取り組めば結果は伴う。そのために高めの料金をしっかりと取るという意見もあります。
たしかに経済的な問題も、こころのテーマとして捉えることも可能です。深層心理学的には働き方やお金に関する観念が作用して、収入が決まる部分もあるので。ただし私はそこまで強い態度をカウンセラーとして取れないので、減額制度を設けています。

――Mi先生は料金について、いろいろと考えておられるのが伝わってきます。だからこそお聴きしたいのですが、私たちのような一般の立場からすると、それでもやはり値段が高いと感じます。カウンセリングは相性だと仰っていて、それは確かにそうだと思います。しかしながら相性が悪かったらどうなのでしょうか。高い料金なのに質が保証できないとなると、カウンセリングを受けるのはハードルが高い。カウンセラーを選ぶのは賭けと言われているようで。そのあたりをどのように考えますか。

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Mi:それはとても大事な指摘です。まずカウンセリングの効果という点について説明したいと思います。
これは私の経験や一般的な傾向も踏まえてですが、初めてこころの不調(うつ状態など)になった人の場合、回復をうながす状況が整っていて、服薬と心理療法をきちんと受けたら、大体3か月が回復の目安です。不調で休職して3か月後に仕事復帰というペース。もちろん完全復帰はもう少し先ですが。カウンセリングで言えば毎週受けて12回です。

――それは早くないですか? 私の知る限り、メンタルの問題が出てそんなに早く回復した人は聞いたことがありません。大体は半年程度、長い人は何年も繰り返すって。

Mi:条件として初発の人、回復のための状況が整っている、服薬と心理療法をしっかりうける。この3条件が整っている場合の目安です。3か月が6か月になることもありますが、遅くとも6か月経てば、ある程度落ち着きます。

――こういって申し訳ないですが、そのことはほとんど一般には知られていないと思います。

Mi:そうですね。知られていないと思います。

――先ほど毎週来てくださいというのは、そのあたりも関係していますか。

Mi:これも私の経験上の話になってしまいますが、初めて不調になった人(初発の人)が毎週、時間を決めた通りに12回程度通えば、とりあえず状態は一旦落ち着きます。適切な服薬をする、休息できる環境がある、などの条件は必要ですが。
一方で、時間もお金もあるけど、料金を必要以上に値引きする人、毎週来ない方、頻度が一定ではない方は、どうしても効果は薄くなります。そういう方々は12回に至る前、つまり回復の動きが形になる前にに大体離脱します。もちろん事前に説明しているのですが。これは私の技量不足もあると思います。
または3か月以上、場合によっては数年間カウンセリングに通う方のほとんどは、初発の不調ではなく、こころにトラウマを抱えていたり、発達障害であったりなど、長年の不調を繰り返しながら生活してこられた方です。そのようなケースでは、生き方そのものを変えていく必要があるので、どうしても長い時間がかかります。10年、20年続けてきた不調のパターンを、初発の不調の方と同じ3か月で変えようとするのは、かなり乱暴だと思います。効果も続かないでしょう。ゆっくりと変わっていくのが結局は長期的に見ると安定が続きます。もちろん、このあたりもクライエントと話し合うので、そういった情報をふまえつつ私の場合は料金を設定します。
あとは高めの値段で1回50分10000円と設定していても、それは私にとっては「上限が10000円で、それ以上は取りません」という宣言でもあります。別途費用はもらわない。ほかのサロンや自己啓発セミナーだったりすると、それにプラスいろいろな商品を買わせたり、追加料金を請求したりするところもありますが、私のカウンセリングでは一切ありません。

うつで休職して3か月で復職は平均水準!?

――私もメンタルヘルスに関心があり、このようなインタビューをさせて頂いております。これまでにメンタルヘルスに関する情報や、実際にうつで休職された方々の様子をうかがったことはありますが、3か月で復帰というのは殆ど聞いたことがありません。うつというと、半年や1年、場合によっては数年かかり、しかも再発を繰り返すという話をよく伺いますので。正直なところ、信じられないという印象もあります。

Mi:このあたりはあまり知られていないと思います。3か月という見通しは、ある程度しっかりと実践を重ねてきたカウンセラーだと平均的な水準だと思います。私が「早めにカウンセリングを受けて頂ければ」というのは、その辺りの事情もあります。早めに受けると回復も早い。
しかしカウンセリングに来られる方は、前にも言いましたが何年もこころの悩みを抱えていて、最終的な手段として来られる方が多い。そういう場合は、どうしても時間がかかります。
また3か月で回復と言っても、それはあくまで症状がある程度治まるという話です。治まったとしても強い精神的負担がかかると、再発する可能性はあります。私は安定状態を保つためにも、頻度は落としてもいいので、しばらくはカウンセリングを続けて頂くことを勧めます。カウンセリングを始めた頃には毎週だったのが、その後落ち着いてきて月1ぐらいでメンテナンスのために通うという方が、理想的なパターンと思います。もちろん、そのあとカウンセリングを卒業する方もおられます。

――実際にカウンセリングを長くされている方からのお話なので、事実に基づいてのお話だというのが伝わってきます。そう考えるとMi先生がおっしゃるように、もっとカウンセリングが普及してほしいという願いは、クライエントを想ってというのが理解できます。
料金については、やはり高いという印象はぬぐえませんが、カウンセリング独自の料金設定がされているというのは理解できます。Mi先生のように、クライエントの経済状況に合わせて対応して下さる先生がいるとわかれば、もっとカウンセリングを受けやすくなるかもしれません。
カウンセラーは高いカウンセリング料金を設定して、弱者に付け込み、自分の利益ばかりを考えているという意見を仰る方もおられるのですが、Mi先生の話を聴いていると、それほど利益追求されていない印象ですね。

Mi:いろいろな手段を使って、上手に稼ぐ方法もあるのでしょうが、現状で知る限り、金儲けばかり考えている臨床心理士は少ないという印象はあります。どちらかというと、私を含めお金儲けは下手な人が多いです。

――お話を伺っていると、そういう印象を受けますね。しかしそういったカウンセラーとしての本音を皆さん、知りたがっていると思いますので、引き続きインタビューをお願いいたします。

Mi:どうぞ、よろしくお願いします。

(次回に続く)

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