プロのカウンセラーが良くある質問についてお答えします。
こころの不調がどれぐらいで回復するかは、状態によって異なります。
ですので、今回は「初めてこころの不調が出たとき」の目安を説明します。
(※うつや適応障害からの社会復帰を目指す方に役立つ内容です)
まずは3か月、休みましょう
こころの不調が回復するための、理想的な条件が整っていれば、まずは3か月が回復の目安になります。理想的な条件とは次の通りです。
・不調の原因となるストレスや不調が始まった時期がはっきりしている。
・しっかりと休むことができる環境(休職、家事も誰かに任せられるなど)
・経済的に安定している。
・服薬をしている、相談しやすい医療機関にかかっている。
・休むことに協力的な家族や友人がいる(孤立していない)
・復帰したあと戻る場所がある(仕事場など)
・自分は変わりたいという思いがある。
・課題や解決法について考えるだけの知的能力がある。
・可能であれば、カウンセリングを受けている(できれば毎週)
これらが整っていて継続的に治療を行えば、目安として3か月ぐらいで症状が治まることが、経験上、多いと思います。ただしこれはあくまで理想的な条件なので、ほとんどの方は全てが整っているいるわけではありません。
また、どれか条件が抜けていたとしても、回復できないわけではなく、調整することで回復に至る可能性は高いです。
3か月という期間は、認知行動療法であっても、カウンセリングであっても、経験のあるカウンセラーが担当すれば、技法による差はないと思います。つまりどの技法であっても、おおよそ3か月ぐらいで不調は治まるのが目安です。
ただし何らかの事情が影響して、3か月が数か月から数年へと伸びることもあります。
そのときは、長期化している要因を探して調整していくことによって、回復への期間が短くなる可能性もあります。またそもそも短期間で回復する不調ではない場合もあるので、専門家の意見を聞きながら治療を行うことが不可欠です。
半年間は社会復帰、リハビリ、再発予防
3か月でこころの調子が回復すると社会復帰、リハビリの時期に入ります。働いていると、仕事復帰が始まる時期です。
こころの不調で休職したあと、仕事に戻れたらそこがゴールだと思われる方もいますが、注意が必要です。社会復帰をしたら、復帰した環境でリハビリをすると考えてください。
復帰したとき、こころの状態は「とりあえずの安定」です。体の怪我でたとえれば、折れた骨がやっとつながり始めた状態。そこで無理をすれば、体を痛めます。ですので、復帰したときに必要なのは「無理をしない」「いきなり前のような働き方に戻さない」「負担を増やすときは慎重に」です。
復帰してすぐに「仕事に戻れた」と思って、休職前と同じような仕事をしようとする人もいますが、そのような行動は再発する可能性を高めます。そのような方の中に「治ったはずなのに、なぜしんどくなったのか?」と落ち込む方も多いのですが、カウンセラーから見たら「無理できないときに、無理して動いたので当然の結果」といえます。
仕事に復帰してから、数か月でこころの不調が再発して仕事を休む。その状態を繰り返して、結果として退職に至る。このようなパターンを繰り返す方はとても多いです。
無理をせずに「自分の現在の体調でできる範囲の仕事だけをする」ことがリハビリの時期には重要です。結果をあせらず、我慢が大切です。ゆっくりとしたペースで仕事復帰が出来た人ほど、再発を避けられます。
カウンセリングでは、この時期になると通う回数を減らす人も多いです。毎週だったのが2週間に1回に減ります。回数を減らすときは、カウンセラーとの話し合いによって決めますが、目安としては「相談に行かなくても、自分のペースで安定して過ごせている」ことです。そうなると自然と「ちょっとカウセリングの回数を減らそうと考えています」という相談が、カウンセラーとできるようになっています。
1年間は再発予防に努める
こころの不調が出てから、1年間は頻度は減らしたとしても治療継続すると良いでしょう。
たとえばカウンセリングを続けていると、この頃には、自分がどうして不調になったのか全体としての状況がわかってくるのと、自分が不調に陥るときのパターンが見えてきます。初めて不調になったときは「これが原因だ」と思っていたことが、1年経つと「それだけが原因ではなかった」と気付くようになります。つまり悩み事に対する視野が広がるのです。
視野が広がることで、「自分はこういう考え方や行動のパターンを取りやすい」「周りの環境ではこういうことが起きやすい」ということが見えてきます。そういったことに気づくことで、ストレスを感じるような状況への対応力が上がるのです。
そうなると以前であれば、ストレスを感じて身動きが取れなくなったような状況でも、自分なりの対処法が思いつき、対応できるようになります。結果として再発を防げるようになります。
この頃には、カウンセリングの頻度も月1程度になってきます。カウンセリングを続けていると、自分のこころの不調についてだけでなく、人生の中で悩んできた課題にも取り組みたいという気持ちが出てくる人もいます。いわゆる生き方の悩みです。
生き方の悩みにも取り組むという目的で、カウンセリングを続ける人もおられます。そのような場合は、こころの状態は安定していても、カウンセリング継続を希望されます。そして人によってはその後数年間、カウンセリングを受けて、自分のこころを深く知ることに取り組むことになります。それは個人の意向に沿って行われるので、カウンセリングをいつ卒業するかについては、カウンセラーと話し合うと良いでしょう。
まとめとして
今回の内容は、冒頭で説明したように「初めてこころの不調が出たとき」の目安です。説明上、わかりやすくするために、こころの不調によって休職した人を前提として書いています。
働いていない人であっても、ストレスによって不調が出てくる場合もありますが、大まかな目安としては、このような流れであると考えて頂いて良いと思います。
また、こころの不調がかなり前からあったのだけれども、何かをきっかけに顕在化したというケースでは、回復や社会復帰に時間がかかるときもあります。また、重い精神病などのときも、回復に時間がかかります。
そういったことも想定すると、こころの不調が出たときには、自己判断せずに専門家に一度は見てもらう方が回復が早いというのは、どのケースであっても当てはまることかもしれません。
精神科受診のハードルが高いと思われる方は、まずはカウンセリングにご来談いただければと思います。受診が必要かどうかを説明しますし、必要な場合は、その人に合った精神科クリニックを検討いたします。
自分一人で解決しようとせずに、誰かに援助を求めることを大切にする。それが回復を早める要因のひとつなのは間違いありません。
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