0.カウンセラーがカウンセリングを選ぶ基準
カウンセリングを受けようと思っていても、どのような基準で選んだら良いのかわからない、という意見を頂くことがあります。
たしかにカウンセリングを受けるとなると高額ですし、もし選択に失敗したときのこころへの負担を考えると、慎重になるのは当然だと思います。
そのような事情もあるので、上記の質問を頂いたと思います。
まず確認しておいて頂きたいのは、一般の方がカウンセラーを決める基準と、同業者がカウンセラーを選ぶときの基準は違うということです。
同業者であるカウンセラーがほかのカウンセラーを選ぶ機会は少ないのですが、あるとしたら次の2点です。
・クライエントへの紹介
・カウンセラーの訓練として教育分析受けるとき。
このようなときに、どのような基準で選ぶのかを説明していきます。
(クライエントの紹介の場合、基本的にはクライエントとの相性を考えるのですが、今回は質問に沿って「まずはここを押さえる」ことを説明します)
1.まずは知り合いのつながり
カウンセラーを選ぶとき、多くの場合、知り合いのカウンセラーに紹介することがほとんどです。
教育分析のときも同じく、知り合いに「いい人いない?」と聞きます。
なぜなら、知り合いであるとこちらのニーズを伝えやすく、相手のカウンセラーがどのような人でかこちらも知っているという利点があるからです。
カウンセラーとしても、紹介をするときには「このクライエントであれば、あのカウンセラーと相性が良いかも」と考えられるので、知り合いの方が選びやすいのです。
現実としては、人と人とのつながりで選ぶことが多いのですが。
これでは参考にならないと思うので、そういうつながりがないときを考えます。
2.ホームページの情報だけで選ぶには
知り合いのつてを使おうとしても、難しいときがあります。
それはクライエントが、遠方に引っ越しするときです。
遠方に住むことになったクライエントが、引っ越し先でもカウンセリングを受けたいと言ったときカウンセラーとして悩みます。
ここでも先ほどと同じく、まずは知り合いのつてがないかを探ります。
それでも見つからない場合、次の段階に進みます。
名前だけでも知っている人、講演会や研修会で話を聞いたことがある人がいないかを探します。
その人がどういう人なのかという手掛かりがつかめる人を紹介します。
ただし、それでも見つからないときの最終手段として、ホームページの情報を確認します。
いきなりホームページを頼って探すという方法は使いません。
ここが一般の方と大きく違うと思います。
3.ホームページのココをチェック!
カウンセラーを選ぶときにの基準は、まずは資格です。現状では臨床心理士を持っている人、一択です。そこから絞り込みます。
一般的には場所、料金、○○療法、扱っている症例、顔写真、業績・経歴を参考にすることが多いとされます。
しかしながら、カウンセラーの私としては、これらのなかで気にする項目とあまり参考にしない内容があります。
1)場所
まず場所は、自宅から通える範囲(移動に30分前後)を選ぶ人も多いのですが、私は少し距離が離れていてもかまわないと思います。
片道1時間かかっても許容範囲だと思います。
カウンセリングを受けたあとは、気持ちに揺れが出てきます。そして帰り道では、いろいろなことを考えたりします。
距離が離れていると、そのように気持ちを落ち着かせる時間を持つことができるので、距離が遠いかどうかは極端な場合(何時間もかかる)を除いてあまり考慮しません。
2)○○療法をしています。○○障害に対応します。
○○療法や扱っている症例ですが、「どうしても精神分析を受けたい」「認知行動療法でないとダメだ」という場合を除きます。
私がカウンセリングを受けるのであれば、○○療法は考慮しません。
カウンセリングは○○療法よりも、カウンセラーとの人柄やクライエントとの相性の方が、私は大切だと思っています。
そのため、どのような種類の心理療法ができるかはあまり参考にしません。
○○療法をしているから、人柄が優れているわけでもありません。私は人格面を重視して、カウンセラーを選びたいと思うタイプです。
また同じく、症例についても、選択基準になりません。「私は発達障害の対応が得意だ」と宣伝していても、参考程度の情報で、決定打にはなりません。しっかりとしているカウンセラーであれば、どのような症例もある程度対応をしたことがあるはずなので、わざわざ症例の名前を出す必要が二からです。
ホームページに症状に関する内容が書いているのは、あくまで宣伝や啓蒙のためです。一般的な症状の内容ばかり書いている説明であれば、プロとしては当然知っている内容なので無視すると思います。
ただし、書いているカウンセラー独自の見解が書いてあるのであれば、それは大切な判断基準になります。その文面から伝わってくる人柄を見ます。
3)顔写真や業績・経歴
顔写真はカウンセラーの雰囲気を伝えるためには、大切な情報だということは理解しています。しかし、それだけで判断する基準にはなりません。
顔写真は加工をすることができます。写真で見た印象と、実際に会ってみたときに相手から受ける印象が、かなり異なることがあります。
顔写真はカウンセリングを受けるとき、私はあまり参考にしません。相手が同性か異性かを気にする人は多いので、写真で確認するという程度です。
業績は、所属学会をみるとカウンセラーの専門がわかるので参照します。それは判断基準のひとつになります。
また業績についても、どのような論文を書いているか、どこに論文を投稿しているかをみることで、カウンセラーの学問的な質がわかるので判断基準になります。
とくに比較的大きな学会(数千人規模以上)で論文を発表している人は能力がある程度高いと思います。
ただし論文を書けるからといって、カウンセラーとしての実践力が優れているわけではありません。
たとえば大学教員など、教職についているカウンセラーをみて「立派な先生に違いない」と判断するクライエントもおられます。しかし実践をあまりしていないままに教員になる人が少なからずいるので、私にとっては判断材料になりません。
また論文や書籍で「この人良い人かも」と思ったとしても、実際に会ってみると印象が違うこともあります。そのため文章だけを読んでも、決定の根拠になりません。
経歴を見るときは、精神科病院で常勤の経験があるかどうかを確認します。精神科病院で働いていると、こころの病いについて基本的な臨床経験が備わっている可能性が高いので安心です。
4)料金は何円を選ぶ?
カウンセラーを選ぶときに料金を判断基準にされる方が多いです。ほとんどの方は、自分が払える値段かどうかで判断するようです。
私がもし料金でカウンセラーを選ぶときには、基準はひとつしかありません。1万円以上3万円以下。
これは経験則ですが、カウンセリングで8000円の設定をしている人と、1万円以上の設定をしている人との間には、大きな能力差があると思います。
8000円までは、ある程度の実践経験を重ねるなかで設定する価格水準。
しかし1万円となると払うクライエントも当然ですが、カウンセラーも「この値段で仕事をする!」という強い覚悟が必要です。
自分がカウンセリングを受けるとなると、クライエントとしても覚悟が要りますし、それ以上にカウンセラーにもそれぐらいの覚悟をもって取り組んでほしいです。
カウンセリングにかける覚悟やエネルギーを客観的に測る水準が、私は1万円という値段設定と思います。
ただし1セッションが3万円を超えると、ちょっと高すぎると思うので、1万円以上3万円以下です。
4.選ぶ基準のまとめ。
知り合いのつてがない場合です。
・値段設定(1万円以上3万円以下)
・業績・経歴(所属学会と論文。精神科病院の経験)
ほかにはカウンセラーが担当した事例について、書いている論文があれば、それも参考にします。
事例を読んで「この人に会ってみたい」と思った時は、会ってみてもよいかもしれません。ただし事例論文は専門家にしか公開されていないので、結局参考になるのは価格、業績、経歴です。
ただし予約を申し込んで会ったときに、なにか引っ掛かる部分があれば、そのまま続けて通う必要はないと思います。
カウンセラーとは長い付き合いになるので、自分と相性が合う人と選ぶのが大切です。
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