社会的に問題となるような言動を起こした人に「あんな人はカウンセリングを受けろ」というような意見が出ることがあります。
しかし、このような意見はカウンセラーとしては困ります。というのも、カウンセリングに対するイメージと、実際のカウンセリングとの間に大きなズレがあるのが伝わってくるからです。
カウンセリングでこころの問題が何でも解決できるのではないか、と過剰な期待が向けられることがあります。
しかしながら、カウンセリングを受けることで悩みが消えてなくなるとか、全く悩まなくなるとか、そういったことはありません。
カウンセリングを受けると、悩みがどのような悩みであるのかという悩みの輪郭がはっきりとするようになります。
そうなると、カウンセリングを受ける前よりも悩み事がわかるため「しっかりと悩む」ことになるといえます。しっかりと悩めるようになるから、結果として解決法が見つけられるようになります。
このようにカウンセリングのことを考えると、最初に取り上げたようなカウンセリングに対する一般的なイメージと、実際のカウンセリングとの違いがわかるかもしれません。
つまりカウンセリングは、自分のこころを変えていきたいと思う人が、「自分のこころとの付き合い方がわかるようになる」ための方法です。
Q .11でも説明したように、カウンセリングとは自分で何とかしようと思った人が受けることで効果が現れます。
自覚がない人はカウンセリングを受けない。
そのため問題があるような言動であっても、その人が問題と感じていない限り、カウンセリングを受けることもないのです。
そもそも「問題起こしたらカウンセリングを受ける」ということ自体が、本当は成り立ちにくい状況を述べているといえます。
ただし犯罪を起こした人が自分の問題を自覚し、どうにかして再犯を予防したいのでカウンセリングを受ける場合があります。そのような場合は、受けることで変わる可能性はあるでしょう。
たとえばある問題行動を繰り返していた男性が、心理療法を受けることで良くなる様子を描いた漫画がありますので、参考にしていただければと思います。
参考文献:まんが サイコセラピーのお話金剛出版
Q.12-2 犯罪や問題行動を起こした人に対して、カウンセリングや精神科を受けるように、という意見を見聞きすることがあります。
それを聞くと、精神科で働いていた立場としては、複雑な思いになります。精神科に行くような人間は犯罪者の予備軍である、問題行動を起こす人が行くところだという先入観があるようにもみえるからです。
もちろん、そういった先入観だけではないとも思いますが。
実際に精神科に来られる方たちとは、病気という自覚がないとしても、何らかの生きづらさを感じている人たちがほとんどです。その生きづらさをサポートするために、医療的または福祉的な支援をしたり、カウンセリングを行うことがほとんどです。
わけのわからない人、常識はずれの人たちが集まる場所だというイメージは、こころの悩みを抱えている人が集まる施設や病院に対する評価としては偏りがあるかもしれません。
たしかに家族に精神病を抱える人がいて、その世話をしてきたという方が精神科や精神病に対して色々な思いを抱えることはあるかと思います。
しかしそういった精神病にまつわる実際の状況を知っている方ほど「あんな問題行動を起こす人はすぐに病院に行ったほうがいい」とは言わないかもしれません。
だれかに「問題解決しろ」といわれても問題を解決するのは難しい。
自分でその課題に取り組もうとする人ほど解決への道が開けます。それは誰かに対して「問題解決しろ」というよりも、自分自身が問題解決にどのように取り組むかということの方が重要なのと、似ているかもしれません。
Mitoce 新大阪カウンセリング・心理検査
mail: office@mitoce.net tel: 06-6829-6856
コメント