Q94. 完璧を求めてしまいます。自分も許せないし、他人も許せません。どうしたらいいですか。

こころの症状

完璧主義がこころに与える影響と対処

現代社会において、完璧を求める傾向が強い方は少なくありません。成果という面からすると良いのですが、それが悩みの原因になることがあります。
なぜなら家庭や仕事など周囲の期待に応えようとするあまり、自分に過剰なプレッシャーをかけてしまうことがあるからです。完璧主義は努力家であり高い目標を持つ人の特徴として好ましい側面もありますが、心身に大きな負担を与える可能性もあるのです。

そこで今回は完璧主義がこころに与える影響や、そして対処するためのアプローチについてお伝えします。

完璧主義の背景にあるこころの傾向

完璧主義は自分や他人に対して高い基準を設定し、その基準を満たさなければ満足できないという思考・行動パターンです。この傾向がある方は自己評価の基準が目に見える成果や他者の評価に依存している場合があります。そのため自分の予測のつかない失敗やミスを恐れ、完璧さを目指し、結果として精神的な負担を強く感じることになるのです。

こころの傾向として、完璧主義の方には次のような特徴があることも多いです。

  • 全か無かの思考
    完璧にできなければ、全て失敗だと考える。グレーゾーンを認めない。

  • 過剰な自己批判
    達成できなかったことや小さなミスに過剰に自分を責める。全部私が悪いと考える、もしくは誰も協力してくれないと思う。しかし、その否定的な思いを他人に伝えられない。自分でも気づかなくなっている。

  • 自分でコントロールしたいという欲求
    完璧に管理しようとし、他人が介入するとイライラしたり怒ったりする。または他人に完璧さを求めるため、他人からの助けを受け入にくくなる

こういった思考パターンの繰り返しにより、ストレスや不安が慢性的に続くという状態になります。

慢性的なストレスと不安、自己肯定感の低さ

完璧主義の方は、少しでも自分で考える達成の基準を下回る結果が出ると、過度に不安を感じます。このような心理傾向を抱えていると、慢性的なストレスや不安につながることがあります。

完璧主義の方は、自分への評価が低い場合があります。「自分は完璧でなければ価値がない」という考えを潜在的に抱いていることがあります。そのため失敗すると自己肯定感がさらに低下するのです。

しかし他人に対しても完璧を求めるので、周囲からは「出来る人」と扱われることもあります。注意しておきたいのは「出来る人」といわれると、さらに「出来る人を続けなければならない」と考えて、自分の心身に負担を高める場合があることです。

カウンセリングのアプローチ。完璧主義を緩める

完璧主義の考えや行動をコントロールするためには、自分の考え方や行動のパターンに気づくことが大切です。また他人から客観的にどう評価されているかという現実を知ることも必要です。

・考え方や行動パターンの気づき
完璧主義の方は、理想に届かない状態について強い不安を感じます。しかしそのことを自覚していない場合も少なくありません。カウンセリングでは、なぜ完璧を求めてしまうのかを振り返ります。行動しているときに考えていること、思っていることを整理し、気づくようになることを目指します。そうすることで、不安のコントロールを目指すのです。

・思考のフレームの変化
「完璧でないといけない」という思考のフレームを変えていきます。特別な事情がない限り、日常生活において「完璧でないと必ず失敗を引き起こす」ことは少ないです。「とりあえずの最善を尽くす」「出来ないときは後回しにして、どうしても必要な部分だけ対処して様子を見る」という現実的な目標に切り替えることも場合によっては大切です。

・段階的な目標設定
完璧主義の方は、大きな目標や課題であっても、一度に達成しようとする傾向があります。「部屋が汚れていたら完璧に掃除しなければならない」「仕事は絶対に後回しにしない」などです。一度で達成を目指すとは、現実的にはゆとりがないという状態です。そのため、大きな負担を自分にかけてしまうことになります。ゆとりを残しつつ、小さな目標を設定する方が、達成感を味わいつつ前進できるのです。

・できない自分を受け入れる
完璧でなくても、自分には価値があると認識することが大切です。これは他人に対しても同じです。完璧でなければ評価されない、周囲にも迷惑をかけてしまう。完璧主義の方はこのように言いますが、実際にはそうではありません。たしかに完璧であると周囲に評価はされる可能性はありますが、かといって完璧でないと絶対にダメというわけではありません。むしろ誰かと一緒に課題に取り組みながら(つまり他人に仕事を任せる)ほうが、高いパフォーマンスを発揮こともあります。できないときは他人に任せる。そして任せた以上、相手に完璧さを求めすぎない。こういった対応が役立つのです。

・失敗は学びの始まり
ミスや不完全さを恐れる必要はありません。失敗をしたとき、成長が始まることはしばしばあります。失敗を成長の一部として受け入れられると、気持ちにも余裕が出てくるでしょう。ミスをしたからこの人はダメだ、と思われるのではなく、ミスをした後にリカバリーしないから、周囲から否定的な評価を受けることが多いのです。この違いを知ることも大切です。

完璧主義が緩むことで得られるメリット

完璧主義の考えが緩んだとき、以下のような効果を実感できるでしょう。

  • ストレスの軽減
    過度な自己批判や完璧を追求するためのプレッシャーが軽減され、負担感やストレスが軽くなります。

  • 自己肯定感の向上
    完璧でない自分を受け入れることで、失敗を受け入れられるようになります。自己肯定感も自然と高まります。失敗にともなう気持ちの落ち込みも、以前に比べて小さくなります。

  • 人間関係の変化
    他人に対しても完璧さを求めることが減り、対人関係も穏やかになってきます。周囲の人たちとの関係性も変化してくるでしょう。

完璧主義を変化させることは時間がかかりますが、自分を見つめ直し、行動を変えていくことで、少しずつストレスが軽くなってくることを気づくでしょう。

まとめとして

完璧主義は生活や仕事、人間関係に大きな影響を与えます。しかし、完璧を求めることによって生じるストレスや不安を、より現実的で健全な目標を設定することで軽減できたとき、感情の安定や環境への安心感が育つでしょう。

もし、ご自身の完璧主義が生活や仕事に大きな影響を与えていると感じているのであれば、ぜひ一度カウンセリングを受けてみることをお勧めします。心理的な課題を抱えておられる場合、お話を伺いながら、ご自身に合った対応について提案させていただきます。

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