仕事復帰は不安との戦いになる
精神的な不調によって仕事を長期間休まれた方が、仕事復帰をするとき、無事に復帰できるかどうか、不調が再発しないか、仕事が続けられるかなど、不安を抱えることがあります。
復職が上手くいかずに再度休職し、最終的には退職するという事態も起きかねません。
休職中にカウンセリングを受けておられる方には、私は復職時に気を付ける点について、かならず説明するようにしています。
伝えた時点(復職前)では、あまりピンとこない方も多いのですが、実際に復職すると「カウンセリングで言っていた通りだった」と驚かれる方も少なくありません。そこで今回は復職時に気を付けることを列挙します。
あせらずに復職できるためのポイント
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休んでいる間の遅れを一気に取り戻そうとしない。復帰してすぐは体力が持たないので、まずはゆっくりペースで仕事をはじめる。
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復帰して始めの1週間は思った以上にしんどさが出てくる。働くことに慣れるまで、退職など仕事に関する大きな決断をしない。1日出勤できただけでも充分に頑張っていると自分に言い聞かせる。
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できる限りゆとりを残して働く。始めは1日8時間、毎日出勤を目指さない。週2、3日勤務など、体力を回復させる日を設けておく方が仕事は長続きする。スロースタートが大切。
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何事も全部自分の責任だと思わないようにする。ほどよく他人のせいにできるようになると、もっと良い。
目標は、仕事や判断を他人に任せられるようになるスキルを身に着けること。仕事を途中で切り上げて、早めに帰宅するというのも身に着けるべき大切なスキル。
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食欲と睡眠のリズムに注意する。いわゆる規則正しい生活にこだわるぐらいの方が予後が良い(寝れなくても、時間になるととりあえずベッドに入るなど)。生活のベースとなるリズムを作る。
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しんどいときは休むのを優先。また他人にしんどさを訴えることは悪ではない。しんどさは疲れを自覚するための大切なサイン。本人も周囲の人も、しんどさを受け入れられるのが理想。
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失敗してもやり直せると思っておく。仕事に復帰してしばらくは結果が出なかったり、失敗することが出てくる。それは復帰したときに起きて当然だと認識しておく。
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仕事復帰して疲れが出やすい時期がある。1週間、ひと月、3か月前後の周期。この時期に疲れが出たり、生活リズムが崩れたり、気持ちの変動が起きる。対応としては、疲れが出たら早く寝る、無理せずペースを落とす、そして遠慮せずに休む。これらができる人は精神状態の安定が長続きする。
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精神的なしんどさは他人には理解してもらえないことを諦める。過剰に期待しない。ただし精神的にしんどいときは正直にしんどいと他人に言える方が得。
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精神科の薬の副作用が怖いと思っても、急に服薬を止めない。状態が安定してきたら、薬を減らすチャンスがかならず訪れる。あせりから服薬をやめると、かえって薬を増やす状態になることもある。
参考文献:中井久夫 最終講義 1983年 みすず書房
基本的な内容を列挙しましたが、こういった事柄は読んだときは納得しても、しばらくすると忘れてしまいます。
復職時に主治医やカウンセラーなどと一緒に内容を確認していくと、さらに有効に役立てることができるでしょう。
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