いじめをなくすことはできますか?という質問があったとき、カウンセラーの立場として現実を知っているので、理想論をあまり話したくないという気持ちが生じます。
正直な思いとしては「いじめをなくすことは相当難しい」と思います。
いじめを経験した人たちが、よくおっしゃることですが、いじめは学校だけではなく、大人の社会でも起きています。そういった社会全体をみても、いじめをゼロにするのは難しいと思います。
ただし、これはとても大事なことですが、「いじめを減らせる可能性はある」「いじめを受けた人のケアをすることはできる」といえます。
いじめを減らすとは?
集団における人間のこころという側面から考えると、いじめが起きやすい状況というのがあります。いわゆる集団心理が働いているときです。
どのような集団心理かというと、その集団のメンバーの間で、不安が高かったり、ひとつの価値観に凝り固まっていたりするときがあげられます。
そのような状態だと、人間にはいろいろな人がいるという多様性が抱えられなかったり、不安を行動で解消したりなど、いわゆる風通しの悪い状態になります。
そのような状態では、だれか一人をターゲットとしてみつけて集団で攻撃するということが起きやすくなります。それがいじめの要因になることがあります。
そこでいじめを減らす対応として、集団が抱えている不安を明らかにして、いじめではない方法で、不安を減らしていくという方法があると思います。
ただし、いじめに関する問題でカウンセリングを訪ねる圧倒的に多くの人は、いじめを経験している人たちです。カウンセラーがいじめを減らすよりもいじめを受けた人をケアすることの方が多いというのが現状です。
いじめを受けた人のケアは?
いじめを経験した人たちは、こころが傷ついているだけではなく、集団のなかで孤立したり、孤独を味わっていることがほとんどです。人間関係のなかで傷ついているので、他人を信頼することが怖くなっている人が多いです。
そのためカウンセリングでは、カウンセラーと安心できる信頼関係を築くことから始めます。信頼関係ができて、安心できるようになったあと、ようやく、こころの傷について扱い始めます。
いじめをなくしてほしい、という人たちもいます。しかしカウンセリングでは、いじめをなくすことよりも、まずはいじめで傷ついた人たちのケアから始めるという現実があります。当然、いじめはできる限り、少なくなればとは思っていますが。
いじめた方(加害者側)のケアが最近、いわれることもありますがどうなのでしょうか。
もし学校にスクールカウンセラーとして入っていて、ひとりでいじめられている人と、その加害者の両方のカウンセリングをするというのは、現実的には難しいかもしれません。
なぜなら、いじめられた人の立場からすれば、そのようなカウンセラーの行動は、裏切り行為にみえるからです。もしどうしても必要になるのであれば、私の場合なら、いじめられていた人から同意を得るかもしれません。
いじめている側のケアとしては、その人のいろいろな情報を担任の先生などから話を聞いて、学校として何ができそうかという相談は重ねます。そういった間接的にケアするという方法も検討します。
いじめをした人のケアとしては、加害者臨床という領域があります。いわゆるDVの加害者、犯罪を犯した人のケアを行っているカウンセラーもいます。
そこでは加害者が抱えているこころの悩みや、問題とされる行動を止められないこと、被害者への気持ちなどを扱っていきます。
ただし一般的にも「加害者側の人が自ら進んでカウンセリングを受けに来る」ことは少ないです。加害者側は「自分ではなくて相手が悪い」という考えになりやすいので、そこをどう乗り越えるかが大きな課題になります。
ただし、加害者側も精神的に不安定であったり、こころに不調をきたすこともあります。そういったときに自らカウンセリングを受けにくる人もいます。
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