【書評】違いを認める友情。アーノルド・ローベル『ふたりはともだち』

書評

アーノルド・ローベル 『ふたりはともだち』 1970年
三木卓 訳 文化出版局 1972年

 

本作は、おっちょこちょいで少し頑固な「がまくん」と、落ち着いていて思慮深い「かえるくん」の日常を描いた「がまくんとかえるくん」シリーズの第1作です。

物語は「はるがきた」というエピソードから始まります。 春が来たのに、がまくんはまだベッドの中。「5月になったら起きるよ」といって、11月から止まったままのカレンダーを指差して布団に潜り込んでしまいます。

困ったかえるくんは、がまくんが寝ている間に、カレンダーをこっそり5月までめくってしまいます。

「見てごらん、5月になったよ」 カレンダーを見たがまくんは、ようやく春が来たことを信じて起き上がり、外へ出ます。

大人の視線で見れば、かえるくんの行動は「相手を騙して無理やり連れ出した」とも取れるかもしれません。しかし、二人の様子を見ていると、損得ではないそれだけではない喜びが流れていることに気づきます。

かえるくんは、春の訪れをがまくんと一緒に喜びたかった。起こされたがまくんも、外の景色を見てとても嬉しそうにしています。嘘をついてまで起こしたのは、相手の喜ぶ顔がわかっていたから。そして自分の予想通り、楽しそうにしている友人を見て、かえるくん自身もまた幸せを感じるのです。

 

「友だちを思いやる」ということ

がまくんは、時にわがままで手のかかる性格です。一方でかえるくんも、がまくんへの思い入れが強すぎる一面があるかもしれません。

「かえるくんばかりが尽くして、損をしているのではないか?」と感じる方もいるでしょう。しかし、かえるくんにとって、がまくんは生活に彩りを与えてくれるかけがえのない相手です。かえるくんのようなタイプにとって、一人で過ごす真面目な生活は、穏やかですが変化に乏しく、孤独を深めるものかもしれません。

がまくんという個性がそばにいることで、予期せぬハプニングが起こり、静かだった日常が明るく変化に満ちたものになる。冬眠のような静止した時間から、生命力あふれる春の生活へと連れ出してくれるのは、がまくんなのです。

二人は持ちつ持たれつの、対等な関係なのです。

 

違いを認め、大切に思う

性格も考え方も全く違う二人が、なぜ深い友情を結べるのでしょうか。

本作は、違っているからこそ、お互いに良い影響を与え合える、という可能性を教えてくれます。

人と付き合う時、どうしても相手の嫌なところや、価値観の不一致が気にかかることがあります。その不一致から、関係が疎遠になってしまうこともあるでしょう。しかし、信頼できる関係を維持する秘訣は、相手との「違い」を否定するのではなく、その違いごと相手を大切にしようとする姿勢にあります。

ときには負担を感じることがあっても、「それはきっとお互い様だ」と思えるこころが、絆を深めていくのではないでしょうか。

「がまくんとかえるくん」シリーズは、全4冊が刊行されています。どの物語もユーモアに溢れ、根底には深い信頼関係が流れています。

新しい季節が始まる時、ふと読み返したくなる一冊です。

 

プロフィール
この記事を書いた人
三輪 幸二朗

Mitoce 新大阪カウンセリング代表
臨床心理士

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