このような質問を受けることがあります。
とくに人を育てる立場の人、指導をする立場の人からの質問です。
そのような立場の人からの質問だと、たしかにそれはあるかもしれません、と答えます。
成長する人は「成長しようとする人」。
成長しない人は「成長したくない人」。
そして、成長したくない人を無理に成長させようとしても、徒労に終わることが多い。
成長したいと思っている人を育てる方が結果につながる。
ただし、成長をしたいと思っていても、成長についてのいろいろな不安を抱えている人はいる。
その人は一見、成長したくなさそうにみえても、条件が整えば成長するので、そこは見極めが大切。
このような要点を伝えます。
すると質問をした人も、たしかにそれは私も考えていたことなので、心掛けてみます。という事になることがあります。
しかしカウンセリングでこのような質問を受けたときは、答えが異なります。つまりクライエントが「成長する人と成長しない人の違いを知りたい」と訴えてきたときです。
本人が「自分が成長する」というテーマで悩んでいる可能性を、まず確かめます。
「だれの成長についての質問でしょうか?」
これによって事情が大きく異なるのです。
変わるように言い続けられてきた人
「自分自身のことです」とクライエントが答えたとき、さらに理由を確かめます。
「それは自分で思っているのか、それとも誰かに言われたのでしょうか」と。
なぜこの質問をするかというと、カウンセリングに来られる方のなかには、「指導されすぎて疲れてしまった人」がおられるからです。
そういった方は、「成長するように言われる。それは私がダメな人間だから。変わらなければと思うけれども変われない」そこに罪悪感や自尊心の傷つきが含まれています。
そのような悩みを抱えておられる方に「成長しようとする人、成長したくない人」の話をしても、プレッシャーを与えるか、場合によっては心情を傷つけてしまうことになります。
そのため、その人が本心として「自分として変わりたい部分」「本当は変わりたくない部分」があるかどうかを確かめていきます。
場合によっては「変わらなくて、そのままで良い部分がある」ことも確かめます。
これは不思議なのですが、「変わらないといけない」と思い込んでいた方が「変わらなくても良い部分がある」ことに気づいたとき、安心と同時に少し自信が生まれるようです。
つまり「変わらないでいる」ことを気づくことによって、「自信が少し出てくる」という変化が生まれます。
もちろん、変わらないでいることを選ぶことで、結果的にまわりから「最近落ち着いてきたね」といわれることもあります。周りは「あの人は成長した」と感じるのです。
カウンセリングで成長するということ
カウンセリングで扱うこころの成長とは、一般でいう成長とは異なるかもしれません。
いわゆる具体的な行動として何かが出来るようになるのを、目指すわけではないからです。
むしろ、場合によっては「変わらない」ことを自分で選ぶのです。
こういった内的な変化は、まわりには気づかれにくいという特徴があります。
しかし、しばらく時間がたってみると、「最近なんか前と違うね」と周りに気づかれるのが内的な変化です。
結論としては「成長するか人か成長しない人か」にとらわれず、その人らしさを支えるのが本来のカウンセリングの目的だと思っています。
成長する人としない人の違いを挙げるとすれば、自分の可能性に気付けるかどうかの違いかもしれません。
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