実は、カウンセリングを受ける人こそ「強い人」なのかもしれません。
私はそう考えています。
それを明らかにするために、まず「弱さ」について考えてみましょう。
こころが弱い
そう言われると傷つきます。でも、たしかにそう感じる部分もあるかもしれません。
「私は弱い。だからダメなんだ」
そう思って自分を責めてしまう。
「もっと頑張らなきゃ」と、自分に鞭を打つような気持ちになる。
しかし本当にそうなのでしょうか?
弱さは強さ?
カウンセラーとして悩みを抱えた方と多く出会ってきました。
「こころがしんどい」と感じて相談に来られた方なかには、周囲から「弱い人間だ」と言われた経験を持つ方もいます。
そのたびに私は考えさせられます。「こころが弱い」とは、いったいどういうことなのだろうかと。
「こころの弱さ」という言葉は、とても抽象的です。明確な定義がなく、人によって受け取り方が異なります。
そのため、なんとなくのイメージで「弱い」という言葉が使われていることも少なくありません。
私がカウンセラーとして感じるのは、「弱さ」と「強さ」は簡単に分類できるものではない、ということです。
誰もが弱い面と強い面の両方を持っているのです。
たとえば人づきあいが苦手な人がいたとします。
その人にとっては、人と関わることが強いストレスになるかもしれません。これは「人づきあいに関する弱さ」と言えるかもしれません。
でも一人で過ごすことが得意で、自分の時間を豊かに使える「強さ」を持っているかもしれません。
つまり、「ある一面の弱さ」があるだけで、その人全体が「弱い」とは言えないのです。
また、「人づきあいが苦手=悪いこと」というのは、あくまで特定の価値観に基づいた評価です。
何かが苦手であることと、それが「悪い」かどうかは別の問題です。
「苦手=弱い。だから治すべき」という考え方も、ひとつの価値観に過ぎません。
それが必ずしも正しいとは限らないのです。
誰にでも苦手なことがあります。
苦手なことは、たしかに「弱さ」とつながる場合もあります。
そして、苦手なことに取り組むには、より多くのエネルギーが必要になります。
だからこそ、人は苦手なことに対して、自然と避ける傾向があります。
その苦手なことにあえて取り組むのがカウンセリングなのです。
では、カウンセリングでは何が行われるのでしょうか。
カウンセリングは弱さに取り組むこと
実は、多くの悩みごとは「自分の苦手な部分」と関係しています。
苦手なことに直面し、避けられない状況になることで、強いストレスを感じたり、深く悩んだりします。
そのときに、カウンセリングを受けるという選択をする人がいます。
彼らは本当に「弱い人」なのでしょうか?
私はむしろ、カウンセリングを受ける人は「強い人」だと思います。
なぜなら、カウンセリングとは「自分の弱さに向き合う場」だからです。
誰しもが、自分の弱さとは向き合いたくないものです。
でも、カウンセリングでは、その避けたい部分としっかり向き合うことになります。
つまり、大きなエネルギーを使って、変化のための一歩を踏み出すのです。
このように、自分の弱さと向き合い、それを変えようとすることは、とても意欲がいる行動です。
一方で、「あの人は弱いからダメだ」と他人を批判する人もいます。
しかし、そういう発言の裏には「自分の弱さと向き合いたくない気持ち」が隠れている場合もあります。他人を否定することで自分を守っているのです。
でも、もしその人が「相手の弱さにかかわろう」とし始めたらどうなるでしょうか。
「かかわるのは大変だ」と気づくかもしれません。
それを避けるために、「あの人はダメだ」と切り捨てているのかもしれません。
カウンセリングで変わること
自分の弱さと向き合い、少しずつ変化していく。
それは簡単なことではありません。
しかし、カウンセリングを通して、かつて「弱さ」だと思っていた部分が、実は「自分の強さ」につながっていると気づくこともあります。
これは、実際のカウンセリングの現場で、よく起こることです。
ですから、
「カウンセリングを受ける人はこころが弱い人か?」
と問われたら、私はこう答えます。
「そうとは限りません。むしろ、自分の弱さと向き合う勇気を持った、強い人なのかもしれません。」
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